被相続人に献身的な介護をした人を大事に思うなら遺言書を書きましょう
生前に療養看護をした人や資産形成に貢献した人にとっては、やはり、他の相続人よりも多く財産を分けて欲しいと思うのが人情というものです。
そして、長年療養看護をしてもらった当の本人にとっては、療養看護をしてくれた相続人に対して、他の相続人よりも多めの財産を遺してあげたいと思うのも人情だと思います。
しかし、それも遺言を書いておかないと、上記の事は出来ません。
さて、生前に療養看護をした人や資産形成に貢献した人の事を「寄与分権者」と言います。
そこで、その寄与分の額を決めるのはどうするのか?
まずは、相続人全員との協議になります。
つまり、遺産分割協議の時に相続人全員と話し合いをして決定する事になります。
しかしながら、遺産分割協議というものは揉めるという事が定説ですから、すんなり、寄与分なんて、そうそう簡単に決まりません。
なので、協議でまとまらない時は家庭裁判所に申し立てて、家庭裁判所の審判で決定致します。
そうなると、裁判手続きなので、余計もめる事になります。
そして、裁判上の審判で寄与分を認められても、たいした金額にはなりません。
具体的に寄与分の算出式を挙げると次のとおりです。
「介添婦の日当×療養看護日数×裁量的割合」となります。
介添えの日当は、1日につき通院介添費は約3,000円、入院介添費は約7,000円位となります。
そして、裁量的割合とは、相続財産の多寡によって、裁判所の一存で乗じる割合を言います。
なので、1年間(365日)、毎日毎日、来る日も来る日も入院介護(1日日当7,000円)をしたとしても(裁量的割合は考慮しない)、以下の金額しか寄与分として認められません。
365日×7,000円=2,555,000円しかなりません。
つまり、毎日毎日、来る日も来る日も、被相続人の方に献身的に療養看護をしたとしても、ヘルパーさん以下の給料位しか認められないのです。
また、裁判所で公正かつ公平に、上記のように寄与分を決定したとしても、他の相続人から「入院していたんだから別に療養看護する必要なんてあまりなかったのに・・・。」「病院でただ単に、被相続人の横に付き添っていただけやん!?」と揶揄する相続人も出てきそうです。
さらに、療養看護をしてくれた人も相続人ではなく、相続人の配偶者や内縁関係の配偶者というケースも頻繁にあります。
こういう人は相続人ではないので、そもそも寄与分というものは認められません。
以上より、被相続人は「生前に療養看護をしてもらった感謝の意」を表明しつつ、療養看護を献身的にしてもらった人に少しでも報いてもらうためにも、寄与分を考慮した遺言書を書いていただきたいものです。
つまり、寄与分は相続人間や裁判所が決めるものではなく、遺言者が自身が決定をしてください。
そうすると、自分の死後も相続人間でわだかまりも残らないでしょう。
ただ、遺留分や他の相続人の相続分も考慮にいれる事は言うまでもありません。